Informe No.0
      ゼロ号レポート
       
      1998.1109 / 業種:都市計画 / 派遣国:チリ

      この報告書は、任国へ赴任する前に提出するもので、「ゼロ号」と呼ばれています。通常2年の任期を終了すると5号まで作成されることになります。

      目次

      1. 任国のあらまし
      2. 任地・配属先について
      3. 協力隊参加の動機、及び隊員としての心構え
      4. 隊員生活の設計


       

      1. 任国のあらまし

      正式国名:チリ共和国 REPUBLICA DE CHILE
      政体:立憲共和制
      元首:Eduardo Frei Ruiz-Tagle
      国花:コピーウェ(ハマナス科のつる植物)
       

      地理

      位置:南米大陸の南西岸に位置する。北にペルー、東にボリヴィア、アルゼンチンと接する。
      面積:756,626I(日本の約2倍)南北 4,330H 東西 最大357H
      主要都市:首都Santiago(5,200,000)
      Concepcion, talcahuano(840,000), Vina del Mar, Valparaiso(800,000), Antofagasta(245,000), Temco(230,000)
       

      地勢

       その細長い国土を西は太平洋に、東はアンデス山脈に挟まれている。国土の80%を山岳地帯が占める。
       北から順に州が12州まであり、首都サンチアゴのある首都圏州と合わせ、13州の構成で成り立っている。北部は砂漠で、銅、硝石等の鉱物の有数の産地である。
       南部は森林、牧草地帯が広がっている。
       第10州以南には原始林があり、第12州となるとツンドラ地帯まである。チリとしては、南極大陸の一部も領土としている。南部の海岸はリアス式でフィヨルドが多く存在している。また、火山が多く、活火山だけでも約55ある。
       

      気候

       北部の砂漠地帯は、降雨がほとんど無い。
       首都圏州附近は内陸性の気候である。夏の最高気温は30度前後、最低気温は10度前後で、日較差は20度前後あり、雨はほとんど降らず快晴の日が多い。また冬は最高気温が12〜15度、最低気温は2〜5度程度で、氷点下まで気温が下がる日は少なく、降水量が多くなる。サンチアゴにおける年間降水量は350ミリで、南下するにつれ降水量が増える傾向にある。
       第10州以南は多雨で、プエルト・アイセンでは年間2,800ミリに達する。このあたりは気温も低く、強い風が吹く厳しい気候である。
       

      国民

      人口:1,460万人(1997)
      人口増加率:1.5%
      民族構成:スペイン系75%、その他のヨーロッパ系20%、先住民系5%
      宗教:カトリック 89%、プロテスタント 11%
      言語:主にスペイン語
      教育:義務教育8年、成人識字率94%
      保健:幼児死亡率 17/1,000、平均寿命72歳
      労働:労働者総数520万人、サービス業及び公務員36%、商工業34%、農林水産業14%、建設業7%、鉱業2%

      国民性:

         風俗習慣の伝統をスペイン、ドイツ、イギリス、そのほか西欧諸国より継承し、これにチリ独特の風土的特性を加味した社会を形成している。したがって、チリ人にはラテン的気風はあまりみられない。
         チリは、太平洋とアンデス山脈とアタカマ砂漠に囲まれ、ほかの中南米諸国から隔絶されているため国民は島国的国民性を有しており、他国についての関心が深い。国民は規律を守り、また儀式を重んじる。

      略史

      1810年 9月18日 独立
      1970年11月    アジェンデ社会主義政権誕生
      1973年 9月    クーデターによりピノチェット軍事政権誕生
      1980年 9月    新憲法草案に対する国民投票の実施(賛成67%)
      1981年 3月    新憲法発効、ピノチェット、大統領に就任
      1988年10月    ピノチェット大統領信任投票否決(反対54% 賛成43%)
      1989年 7月    憲法改正国民投票可決(賛成86%)
      1989年12月    大統領選挙でエイルウィン反政府連合統一候補が当選
      1990年 3月    エイルウィン、大統領に就任、国会が17年ぶりに再開
      1993年12月    与党連合のフレイ前キリスト教民主党総裁が時期大統領に選出
      1994年 3月    フレイ、大統領に就任(2000年3月まで)
       

      経済

      GDP:$7,710億
      人口当たりGDP:$5,280
      年間成長率:7.1%
      GDP産業別内訳:鉱業8.2%、農林水産業7.5%、工業15.3%、
      貿易(1996):
        輸出$1540億、EU 24%, U.S 17%, 日本16%, U.K 6%, Brazil 6%, 韓国6%, Germany 5%, Agentina 5%
        輸入$1740億、U.S 24%, EU 20%, Argentina 9%, Brazil 6%, 日本 5%, Germany 4%

      国防

      陸軍:55,000人
      海軍:29,000人
      空軍:15,000人
      警察隊:27,000人
       
       



       

      2. 任地・配属先について

       

      任国における協力隊の活動

       隊員派遣が開始されたのが1997年(平成9年)からであり、1998年11月現在帰国した隊員はまだいない。

      派遣中の隊員数:19名
      分野別派遣状況:農林水産部門 12人、土木建築部門 2人、保健衛生部門 1人、教育文化部門 4人
      派遣予定:1998年(平成10年)2次隊4名
      派遣取極日:1996年(平成8年)7月9日
      派遣開始日:1997年(平成9年)7月14日
      任国受入窓口:国際協力庁(AGCI)
      海外手当:US$530(住居手当:上限枠申請中)
      調整員:下藤実
       

      配属先の機構及び事業内容

      配属先:内務省(Ministerio de interior)
      勤務先:
        ノガレス市役所(Municipalidad de Nogales)、企画調整課(Secretaria Comunal de Planificacion y Coordinacion)及び公共事業課(Direccion de Obras)
        Calle Pedro fenix Vicuna 199, Nogales, V region
        首都サンチアゴから115H(バスで2時間)

      隊員が担当する業務

      当初の要請の都市計画的な内容から、建築的な業務へと変更されている。
        都市計画基本計画にそった公共施設の建築設計・監理、公園や道路の計画に対する助言を行う。
        1)コンサルタントの設計したものに対する市役所側のアドバイスを行う。
        2)住民の意見を反映させた都市計画、公共建築、公園、道路の設計、監理に対するアドバイスを行う。
      隊員の地位:建築士(arquitecto)
      隊員の住居:職員官舎(市所有のゲストハウス、Servicio Pais のボランティアと同居)
       
       



       

      3. 協力隊参加の動機、隊員としての心構え

       

      協力隊参加の動機

       建築について学び、設計に携わってきて、かねてから第三世界の住環境や建築文化の貧困に対して、どのような人たちが、どのように解決や改善の為に働いているのか関心を抱いてきた。日本には良く訓練され、博識もある建築家などの専門家が多くいるが、いわゆる開発途上国の抱える問題についてそうした人たちがどう取り組んでいるのかは、これまでほとんど分からなかった。「分からなかった」というのは、情報として入ってこないだけなのか、私の不勉強のせいなのか、それとも見るべき取り組み自体が無いのか、判断しかねるという意味である。
       若干でも開発途上の環境における建築活動について調べるうち、乏しいながら経験も積んだので、そろそろ私自身の目で見て、共に体を動かしながら、建築・都市計画的な部分でなし得ることをしていきたいと思うようになった。しかし、実際のところ、私のようなものが参加できる組織やプログラムはほとんど無かった。青年海外協力隊はそうしたなかで、自然に浮かび上がったプログラムだった。
       

      協力隊員としての活動のあり方

       青年海外協力隊の派遣が開始されてから間もないうえ、勤務地のノガレス市は地方の小村なので、協力隊員に対するイメージは未だ固定していないと思われる。最近まで米国ピースコーを受入れていたこと、また国内ボランティアのServicio Paisが現在やはり市役所で働いているので、それに準ずる期待をされることは想像できる。
       活動のあり方について考える際、ふたつの側面があるといえるだろう。ひとつは技術専門家としての側面であり、もうひとつは日本から来たボランティアとしての側面である。
       技術協力を行うといっても、協力隊の独特な性質で、あらかじめ固定したプログラムを定めるに至らない場所へ飛び込んで行く形をとっているから、大切なことは情況を正確に認識して、周囲の職員やあるいは住民とその認識を共有しあうことだろう。そのうえで、何を問題点として解決してゆくか、何が我々にとって目指すべき目標なのか等といった事を共に考えてゆくことだ。外部から来た人間が現地の行政に助言する場合、違った視点から発言できる有利さと、地元の共通の認識や歴史を知らない危険の両方が付いてまわるので、この点も気を付けてゆきたい。
       日本から来たボランティアとしての側面では、ノガレス市の意志として日本の地方自治体との交流を検討しているので、最も身近な外交使節として見られることが予想される。ただ、ボランティアと言っても、実際には市役所の一員として働くのであり、その点で他の職員と隔絶されたところがあってはいけないと考えており、外国人としての有利な点と、ハンディを弁えながら活動してゆきたい。また、チリの人々の生活をつぶさに見る事のできる日本人として、しっかりと任地の現実を捉えて来ようと思う。
       

      赴任を前にしての抱負、あるいは不安な点

       抱負は、前項または次の活動計画に譲りたい。
       生活について、特に不安に感じていることはない。今の時点で心配なのは、主に業務を遂行する際の事である。
       まず、現在の派遣前の段階で集められる資料は、分量でも、選別の的確さでも十分なものには出来ないことから、赴任後、必要な資料は逐次収集することになろう。その際に、どうしても日本に請求したいものが生じたときに、どこまで迅速に対応してもらえるか分からない。建築・都市計画系の作業フェーズの進行は遅い方だが、この点不安に感じている。
       また職種の性格として、込入った内容の打ち合わせを繰り返すので、コミュニケーション能力がついてゆけるかは心配な点である。特に行政にかかわるので、正確な理解と伝達が出来ないといけない。
       

      現時点で考えている活動計画等

      ノガレス市の公共建築・都市計画事業の業務
        専門の業務での設計・監理及びアドバイスで、現地の都市基盤整備に対して着実な成果を残したい。下記の各種の活動の、重要な帰着点である。


      産業振興

        企画調整課の担当業務の一つは産業振興であり、現地の産業構造を理解し、バランスのとれた構造へと改善していくために尽くしたい。ノガレス市は要請書にあるとおり、地方の小さい都市との友好・交流関係を築く意志があり、また日本企業の誘致にも興味があるようである。その橋渡しとして働き、産業振興の一助としていくつもりである。


      記録

        日誌等で第三者にも伝えられるソースを蓄積してゆく


      チリの建築・都市にかんする調査

        チリを理解する上でも、地域の建築文化や都市の特徴を知ることは重要である。南北で気候風土が劇的に変化するこの国の人々が、自身の生活をどのように築き、表現してきたのかを知りたい。


      居住環境の調査と分析

        すでに行われている可能性もあるが、第三世界の農村の居住環境の事例として、調査・分析をしてゆきたい。


      建築・都市計画分野で活動するNGOその他の組織の活動についての調査

        1998年(平成10年)8月の技術補完研修で、サンチアゴ等の都市スラムへの住宅供給を行っているNGOがあることを知ったが、そうした組織の活動について調査してゆきたい。日本ではほとんど紹介されていないことであり、また今後の私自身の活動にとって参考になるからである。

       



       

      4. 隊員生活の設計

       

      現地の人々に接する際の心構え

       せんじ詰めて言えば、いかに友好関係を築くことができるかということではないだろうか。外国人としての自覚は必要だが、あらかじめある障壁や特性はキャラクターのひとつであり、乗り越える中で理解し合えるものと思う。最後までゲスト扱いとなることは避けたい。
       

      現地での生活形態、生活管理

       現地のことは赴任するまで分からないが、ごく普通の市役所職員として当り前な生活をしてゆきたいと考えている。また、農業を主な産業にしているから、農家の生活についても知っていく必要があるだろう。
       

      余暇の利用方法

       市役所勤務以外の活動に当てるほか、現地の人々との交流にできる限り利用していくつもりである。交流の方法については、今後工夫してゆきたい。
       また、他の協力隊員やNGOの人々との交流を深めたり、情報交換する機会とするつもりである。
       
       
       
       
      以上

           
            統計資料については、主に平成8年4月発行の外務省中南米第一課「チリ共和国概観」、および1998年10月発行のアメリカ合衆国国務省「Background Notes」から新しいものを引用した。