2004年02月08日
たそがれマイ・ラブ (2)
友人から廃車寸前のセリカ1600を買ってからというもの、バイトで稼いだ金のほとんどはガソリン代になった。高速代もあまりなかったので、お気に入りのコースは環八上野毛から第三京浜、横浜新道と乗り継いで行く湘南だった。
小さな恋もいく度となくしていたので、ナビゲーターズ・シートに彼女がいることもあったが、ひとりで行くことが多かった。チューニングボタンがガシャっと力を入れて押し込まないとだめなメカニカル式のカーラジオからは大橋純子の「たそがれマイ・ラブ」がいつも流れていた。今でもイントロを聴くとソレックス・キャブレターの吸気音やオイルの焼ける匂いを思い出す。
わけもなく走り回った。漠然と続く未来が怖かった。だからもう終わりにしようとも思った。
Aに
「一緒に行くか」
と聞いた。
「うん、いいよ」
ためらいもなくそんな答えが返ってきた。
季節は冬だった。東名を沼津で降りると修善寺をめざした。ただ夜のとばりがフロントスクリーンにのしかかっていた。星が空から落ちてきそうだった。修善寺からはあてもなく林道のような細い道に分け入り、人の気配がないところをさがした。もう夜明けまでにあまり時間がなかった。
つづく(かもしれない)
コメント
コメントする